HOME >> 実際にあったご相談実例 >> 相続開始前の「放棄」は有効?無効?

実際にあったご相談実例

私は、母親がまだ存命のうちに兄から「母親の相続を放棄する」という書類にサインをさせられました。先日母親が亡くなったのですが、この書類には効力があるのでしょうか?できれば相続したいのですが…

結論から申しますね。ズバリ、

 

相続開始前(生前中)の相続放棄は、いずれの形式(口頭、書面を問わず)であっても効力はありません!

 

です。

 

 

理由をご説明致しますと、そもそも「相続」自体が死亡という事実をもって初めて開始されるものだからです。

また、相続放棄の手順としては、必要書類を揃えて家庭裁判所へ申述し、受理の審判が成されて初めて効力が生ずるものであると民法で定められているからです。

 

ですから、今回ご相談いただいた事例につきましては、お兄様から差し出された書面にサインされたからといって相続を放棄したことにはならない、つまりその書面に効力はないということで、大変安心されたご様子でした。

 

 

では、なぜ生前の放棄が認められていないのかわかりますか?

 

一番イメージしやすい事例としましては、今回のような母・兄・私という家族関係であったとして、すっごく悪いお兄さんが

「おい、お前にはお母さんの財産は一切相続させない、今すぐ放棄の書類にサインしろ」

と言ってサインをさせた場合、それが有効だったとしたらどうでしょうか?暴力でもなんでも、とにかく強い者が弱い者の相続権を奪ってしまうことができるわけです。

 

そんなことがまさか許されるはずがないですよね。

 

これが生前に相続放棄ができない理由です(イメージしやすいよう極端な例を挙げました)。

 

 

話を戻しまして、「生前の放棄はできない」ことは既にお伝えしました通りですが、実はある特定のもの限って放棄することは認められております。

 

それは「遺留分」についてです。

 

【参考:遺留分に関するご相談実例】

遺産分割協議成立後に遺留分を請求できる?

 

 

遺留分の放棄?初めて聞く方も多いかと思います。

先ほど、「相続の放棄は生前中にはできない」とお伝えしましたが、「遺留分の放棄」は生前中にすることができるんです!

 

ただ、これも簡単に作成した書類にサインをするだけではやはり不可です。

遺留分の放棄の手続きも相続放棄と同様、家庭裁判所へ申述し、受理の審判が成されて初めて効力が生ずるものです。

 

 

ここでワンポイント!!

 

遺留分の放棄が家庭裁判所にて正式に認められた場合であっても、それはあくまでも遺留分の放棄をしたというのみで、相続権それ自体は残っています

相続権があるということは、つまり、被相続人となる方に負の財産(借金等)がある場合、思わぬ負債を背負うことにもなりかねません。

 

また、やっと説得して遺留分の放棄が家庭裁判所で認められたのに、遺言書を作成して誰に何を相続させるかを明確に示しておかないと、その遺留分の放棄をした人に本来の相続権を主張され、結果的に法定相続割合で分割することにもなりかねません

 

 

【参考:遺言書の作成に関するご相談実例】

遺言書による「遺贈」と養子縁組による「相続」、どちらがオススメ?

 

 

ご相談内容からずいぶん派生した回答になってしまいましたが、他の相続人から「放棄」の同意について迫られたときは、まず何の「放棄」であるか、相続財産、遺留分の詳細をきちんと確認し、それぞれ放棄した場合に想定されるメリット、デメリットを整理することが重要です。

 

どのような書類であっても記名、捺印した後で取り消しするのはやはり大変ですからね…

 

 

■■■まとめ■■■

「相続放棄」は生前中にはいずれの方式であっても出来ない(相続開始後は可能)

「遺留分の放棄」は生前中であっても出来る

いずれも家庭裁判所に申述し、受理の審判があって初めて効力を生ずる

いずれの「放棄」についても、どのような財産があり、放棄することにより生ずるメリット、デメリットを正確に把握しておくことが重要

 

 

【関連したご相談実例】

相続放棄をすれば、子、父母、兄弟姉妹へと相続権が移ります!ご注意を!

 

 

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