相続税の納付に関するご相談ですね。
今回は
- 相続税の申告期限が迫っている!
- 相続税額が1,000万円以上である!
- 相続財産のほとんどが不動産で、納税資金がない!
というところがポイントかと思います。
1.相続税は「10か月以内に」「一括現金納付」が原則!
相続税は
- 相続開始の翌日から10か月以内
- 金銭で一時納付する
が原則ですが、金銭で納付することがどうしても難しい場合には、「延納」「物納」といった納付に関する特例制度を使うことができます。
延納や物納は馴染みがない言葉かと思いますが、文字通り、相続税について
・納付期限を延長する(年賦払)
・物(不動産など)で納付する
ことをいいます。
ただし・・・
(ここからすごく重要です!)
相続税はあくまでも金銭で一時納付することが原則です!
それぞれの制度を受けようとする場合には、次の要件を満たし、かつ、それぞれの規定を受けるための申請書を申告期限までに税務署長に提出する必要があります!
また、申請書の提出後、承認まで3か月ほどの期間が掛かりますので、早めに準備する必要があります!
ではまず、相続税の延納制度を受けるための要件をお伝えします。
1-1.延納とは
【延納の要件】
- 相続税の納付税額が10万円を超えること
- 申告期限において金銭で納付することが困難であること
- 申告期限までに延納税額に相当する担保を提供すること
となります。
今回のご相談内容では、2つ目までの要件は既に満たしていますので、あとは申告期限までに延納税額に担保を提出することで相続税の延納制度を活用できそうですね。
さらに、不動産の割合が相続財産の10分の5以上(要は財産の半分以上が不動産)である場合には、不動産に係る相続税は「15年」、4分の3以上である場合には「20年」まで延長することができます。
今回の相続財産のほとんどが不動産ということですので、20年まで延長できる可能性が高そうですね。
ただし、延納制度については、納付の延期に伴って分割して納付する相続税に加えて利子税を納付することになりますので、思わぬ出費につながる恐れがあります。
活用には注意が必要です。
1-2.物納とは
次に、物納制度を受けるための要件をお伝えします。
【物納の要件】
・延納によっても相続税額を金銭で納付することが困難であること
となります。
すごくわかりやすいですが、すごく厳しい要件だということがお分かりいただけますでしょうか?
現金一括(大原則!)
↓
延納(要は現金!)
↓
物納(分割でも無理なら仕方ない…)
という流れです。
ご相談をお聞きする中でも「いらない不動産があるので、これで納税しようかと思っています」とおっしゃられることがありますが、それはできないということがおわかりいただけるかと思います。
そしてさらに、物納に充てることができる財産は日本国内にあるもので、一定のものに限られています。
仮に、相続財産の中に担保権が設定されている不動産や境界が明らかでない土地などがある場合には、その不動産は物納に充てることはできませんので、相続前からの準備が必要な場合もあります。
2.まとめ
最後にもう一度、一定の要件を満たすことで
- 延納制度から物納制度へ(特定の延納税額に係る物納)
- 物納制度から延納制度へ(物納の撤回、物納の撤回に係る延納)
それぞれ変更することはできますが、これらの制度を受ける際には、事前に専門家に十分ご相談されることをお勧めします。
■■■まとめ■■■
- 相続税は原則金銭納付。
- 金銭納付が不可能な場合には、「延納」→「物納」の順で適用を受けることができる。
- 一定の要件を満たすことで、「延納」⇔「物納」に変更することができる。