- 銀行の相続手続きに期限はない
- しかし、手続きをせず放置してもメリットはなくリスクしかない
- リスクは3つ:①不正な出金 ②相続関係の複雑化 ③休眠口座
名義人の死亡後、銀行口座の相続手続きをしないまま放置していませんか?
それが意図的かどうかにかかわらず、手続きをせずにそのままになってしまっていると、気になるのが「手続きの期限」です。
先に結論をお伝えすると、よく想像される「いつまでに手続きしないと罰則が…」というような、法的な期限はありません。
だからといって、いつまでも手続きをしないまま放置しているのもリスクです。
具体的にどのようなリスクがあるのか、代表的な事例を3つご紹介しながら、手続きを実際に担当している専門家が解説していきます。
目次【本ページの内容】
1.リスク①凍結していないと、預金を引き出されてしまうかもしれない
銀行口座は、銀行が口座名義人の死亡を知った時に凍結されます。
(相続人やご家族らが、銀行へ連絡するかどうかにかかわらず)
※ちなみに、死亡と同時に、あるいは死亡届を提出すると自動的に口座が凍結すると思っている人もいますが、そのようなことはありません。
つまり、銀行が死亡の事実を把握しない限りは凍結せず、凍結していない状態であれば、キャッシュカードを入れて暗証番号を入力することで入出金ができてしまうということです。
この状況のまま口座を放置すると、名義人以外の人で通帳やキャッシュカードの所在、また暗証番号などを知っている人がいれば、簡単に預金を引き出されてしまう危険性があります。
- 同居していた兄弟が、勝手にお金を引き出して使っている
- 全く身に覚えのない名前で、毎月自動的に引き落としされている
など、実際にこうしたトラブルを含めたご相談は後を絶ちません。
銀行口座が凍結するということに対して、「必要なときに預金が引き出せなくなる」「毎月の光熱費の引き落としができなくなる」などというネガティブなイメージがお持ちの人も多いですが、引き出せる状態にあるということは、相続人かどうかに関わらず、他の人も引き出せる可能性があるということです。
- 相続するかどうか迷っている
- 相続人同士でどう遺産を分けるかまだ決まっていない
などといった理由で、すぐに相続手続きを進められない状態でも、まずは銀行に死亡の連絡を入れ、”敢えて”口座を凍結しておくことで、かえって預金が守られることになります。
2.リスク②時間の経過で相続関係が複雑になるかもしれない
銀行の相続手続きに限らず、相続手続きのほとんどは、相続人全員で手続きをすることになります。
【銀行口座の相続手続きが1人でできるケース】
遺言書があり、その中で
- 預金を受け取る人が指定されている場合
- 遺言執行者が指定されている場合
は、その人単独で手続きすることができます。
(それ以外は、相続人全員の戸籍や実印を求められることがほとんどです。)
この相続人全員というのがポイントで、誰が相続人であるかは死亡日時点で判断します。
それは、相続手続きの内容やタイミングによっても変わりません。
しかし、すぐに相続手続きをせず放置していると、時間の経過とともに相続人の誰かが亡くなってしまう可能性もあります。
この場合、相続権は亡くなったことによって消滅するのではなく、その亡くなった人の相続人へと移ることになります。
これを数次相続(すうじそうぞく)といいます。
言葉だけではわかりにくいと思いますので、イラストでご説明します。
父の相続手続きにおける相続人は母、自分、弟の3人でしたが、そのまま相続手続きをしないうちに母と弟が亡くなった場合のイラストです。
この場合には、
- 母の前婚時の子(自分からすると異父兄弟)
- 弟の妻とその子ら
も「手続きをする人」として相続手続きに参加することになります。
つまり、そもそも父の相続人ではなかった人ですが、手続きをしないうちに母と弟が亡くなってしまったことによって、結果的に手続きに関与する人が増えてしまったということです。
また、相続人が相続手続きをしない間に、認知症等で判断能力が欠けた状態になってしまうと、成年後見人が代理人として手続きをすることになり、手続きはさらに複雑になります。
残念ながら、いつ誰が亡くなるかはわかりません。
そのため、なるべく(当初の)相続人が健在であるうちに相続手続きを進めておく方が、スムーズに進められます。
3.リスク③休眠口座になってしまうかもしれない
銀行口座の相続手続きが放置されるのは、意図して後回しになるばかりではありません。
よくあるケースが、どの銀行に故人名義の口座があるのかわからず、手続きをしない(または気付かない)まま放置してしまうケースです。
そうして長期にわたって銀行口座が放置されると「休眠口座」になる可能性があります。
休眠口座となった預金は、金融機関から預金保険機構に移管され、民間公益活動のために活用することが法律で定められています。
また銀行によっては、休眠口座に対して手数料を導入しているところもあります。
利用していないにもかかわらず毎年手数料のみ引かれてしまい、預金が減っていくことも考えられるため、可能な限り銀行口座の相続手続きは早く進めるようにしましょう。
4.銀行の相続手続きに時効はない、しかし…
銀行口座の預金の払戻しを受けるにあたり、「相続」だからという理由での特別な時効はありません。
ただし、民法上は債権の時効が5年と定められているため、預金の払戻しに時効があるとすれば、5年ということになります。
(債権という言葉がわかりにくいかもしれませんが、預金の払戻しを請求する権利というイメージです。)
しかし、一般的に銀行などの金融機関が時効を援用(時効を主張すること)することはなく、ほとんどの場合は休眠口座にならない限り払戻しに応じてくれるようです。
「相続手続きをしないまま預金を放置すると、時効によって国のものになってしまう」という都市伝説のような話がありますが、一定期間の経過で自動的に国のものになるというようなことはありませんのでご安心ください。
実際に相続手続きの代行やご相談をお受けしている当センターが声を大にして言いたいことは、「銀行の預金に関する相続手続きに期限がないとはいえ、放っておくメリットはひとつもない!」ということです。
放置している間に相続関係が複雑になってしまい、調停でしか解決ができない状況になってしまった事例もあります。
「まだ凍結していないから」「手続きが面倒だから」そういった考えが、後々大変な状況を招くことも十分にあり得ますので、相続が開始した後は速やかに手続きを進めましょう。
5.まとめ
銀行口座の相続手続きに期限はありません。
しかし手続きを後回しにして放置してしまうと、
- 凍結していないと、預金を引き出されてしまうかもしれない
- 時間の経過で相続関係が複雑になるかもしれない
- 休眠口座になってしまうかもしれない
といったリスクがあります。
期限はなくとも、できるだけ早く手続きを進める心構えが大切です。
この記事では、銀行口座の相続手続きの期限に特化して解説しました。
銀行口座の相続手続き全般については、ぜひこちらをご参照ください。
だれが、なにを、どのように手続きすべきか、また手続きの際の注意点をより細かに解説しています。
>>【必見】銀行口座の相続手続き|スムーズに進めるための手順と必要書類(まごころ相続コンシェルジュ)
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