1.相続税の納付は、原則「一括現金」
相続財産が不動産ばかりだった場合、このようなご相談をよくお聞きします。
地主さんの場合などによくあるケースかもしれませんが、不動産がたくさんあって評価が高ければ、それに伴って相続税額もやはり高額になります。
そこで、預貯金や現金がほとんどなかった場合、その相続税はどのようにして支払うのでしょうか?
結論としましては、「原則として」現金一括納付です。
100万円であろうが1,000万円であろうが、算出した相続税は申告期限まで(死亡から10か月以内)に全額を金銭にて納付することになります。
しかし、やはりそれが難しいという可能性は十分に考えられます。
今回のご相談もそうですが、そもそも相続財産が不動産だけだった場合、それから相続人間で分割をした結果、Aさんは預金でBさんは不動産という形で分けてしまった場合などが考えられます。
分割によって不動産のみになってしまった場合は、相続人間の話し合いによって相続税額分だけでも預貯金を相続させてもらうこともできるかもしれませんが、そもそも相続財産が不動産だけという前者の場合は、どこかからお金を捻出する以外に方法がないことになります。
この場合の救済措置は、大きく分けて2つあります。
1-1.救済措置①「延納」という方法
まず1つ目ですが、「延納」という方法です。
こちらは「延ばして納める」ということで、そもそもの納税時期を遅らせるという意味ではありませんが、いくらかずつの分割にしてもらうという方法です。
金額や回数、期間などは全て税務署と相談して決めることになりますが、そもそも支払えるお金があるのに延納をすることは不可であるため、支払うだけの資力がないことの証明も必要になるかと思います。
1-2.救済措置②「物納」という方法
2つ目は、「物納」という方法です。
こちらは「物で納める」ということで、相続財産が不動産ばかりだった場合、その不動産自体を納めてしまうという方法です。
結果的には不動産を手放すことになりますが、納税資金がなければ相続不動産をお金に変えてしまうというのがこの方法です。
ここで一点注意が必要なのは、この物納する不動産をいくらで評価してくれるのかというところです。
不動産の金額はいろいろな見方がありますが、
- 実勢価格(市場価格):実際に市場で取引されるときの売買代金
- 路線価評価:国税庁の定める路線価を使って算出する評価額
- 固定資産税評価額:固定資産税を算出する際の基準となる評価額
などといった評価の方法があります。
どれが高いか安いかについては場所、広さ、流通性などによって一概にいえませんが、物納をする際に使われる評価の方法は路線価評価(相続税の申告で使用する評価額)になります。
さらにもう少し掘り下げてお話しますと、小規模宅地の特例というものを使って相続税の申告する場合、宅地の評価を8割減にすることができます。
ではこの特例を使って申告し、さらに物納を選択した場合、その評価額はいくらになるでしょうか?
答えは8割減された評価額です。
仮に1,000万円の土地だった場合、200万円の評価として納めることになってしまうということです。
この評価減は非常に厳しく(もちろん評価減になるということは相続税額の面でも圧縮の効果があるのですが)、実際の市場価格とは大きく乖離することになってします。
物納ではなく市場で取引すれば、もっと高額になる可能性が高いということです。
2.まとめ
以上をご理解の上で、延納や物納を選択されることも可能ですが、いずれにせよ「支払うお金がない」ということが大前提となります。
その審査をしてもらうという意味で、事前に申請書などを提出し、許可を受ける必要があります。
ご希望される方は、一度税理士にご相談されることをお勧めします。
お金がない=延納や物納とすぐに考えず、それよりも特例などを活用してそもそもの相続税額を抑える方法がないのか、その辺りの検討をまずされることをお勧めします。