葬祭費とは、故人の葬儀や埋葬をした人に対して支給される給付金のこと
- 葬祭費支給制度の概要
(どの保険加入者が亡くなった時に、だれが、どこに請求するのか) - 葬祭費の支給を受けるための4つの注意点
葬儀にどれくらいの費用がかかるかご存じでしょうか。
規模や形態にもよりますが、100万円近くかかることも少なくありません。
つまり、突然の家族の死と共に、高額の葬儀費を負担することになるのです。
そこで、遺族の負担を少しでも減らすために、健康保険組合では「葬祭費の支給制度」を設けています。
(健康保険や共済組合によっては「埋葬料(費)」という名称のところもあります。この記事では「葬祭費」に統一して記載します。)
この記事では、この葬祭費の支給制度がどういうものなのか、またどのように請求すればよいのか解説していきます。
目次【本ページの内容】
1.葬祭費支給制度の概要
葬祭費は、自動的に支給されることはありません。
支給を受けたい場合は、忘れずご自身から請求をしましょう。
支給金額は、請求する健康保険組合によって変わりますが、5~7万円が多いようです。
どのように請求すればよいのか、解説していきます。
1-1.〈請求先〉窓口は生前に加入していた健康保険組合
請求先は、死亡日時点に亡くなった人が加入していた健康保険組合になります。
就労状況、加入状況などにより、下記のように分かれます。
いずれか1か所から、葬祭費として支給を受けることができます。
それぞれ簡単に解説します。
国民健康保険に加入している人
対象者:自営業者、自営業者の家族、退職者(75歳未満)、無職者など
請求者:喪主の人
問合先:住民票のあった役所の担当窓口
詳細は、Web上で「○○市 葬祭費」で検索すると、各自治体における請求方法などが出てくることが多いです。
〈例〉大阪市|葬祭費の支給
後期高齢者医療保険に加入している人
対象者:75歳以上の人(後期高齢者医療保険制度加入者)
請求者:喪主の人
問合先:住民票のあった役所の担当窓口
詳細は、Web上で「○○市 葬祭費 後期高齢」で検索すると、各自治体における請求方法などが出てくることが多いです。
勤務先の社会保険組合に加入している人
対象者:会社員(扶養者)、またはその扶養に入っていた人(被扶養者)
問合先:各健康保険組合等(保険証に記載があることが多いです)
(勤務先が手続きをしてくれることもあるため念のため問い合わせてみましょう。)
【加入者(扶養者)が亡くなった場合】
請求者:埋葬を行う人
※健康保険組合によっては個別の支給要件があるところもあります。
(例:亡くなった人によって生計を維持していた人、生計を同一にしていた人、など)
※扶養されていた人がいない場合は、実際に埋葬を行った人が「埋葬費」等として支給を受けられる制度もあります。
【扶養に入っていた人(被扶養者)が亡くなった場合】
請求者:扶養者
「家族埋葬料」等として、扶養者(加入者)に支給されます。
→それぞれ事前に各健康保険組合等に確認するようにしましょう。
手元に亡くなった人の保険証がある場合は、Web上で検索してみるのもひとつです。
共済組合、船員保険などに加入している人
対象者:教員、医療従事者、公務員、船員(扶養者)、またはその扶養に入っていた人(被扶養者)
問合先:各共済組合支部等
【加入者(扶養者)が亡くなった場合】
請求者:埋葬を行う人
※共済組合によっては個別の支給要件があるところもあります。
(例:亡くなった人によって生計を維持していた人、生計を同一にしていた人、など)
※扶養されていた人がいない場合は、実際に埋葬を行った人が「埋葬費」等として支給を受けられる制度もあります。
【扶養に入っていた人(被扶養者)が亡くなった場合】
請求者:扶養者
「家族埋葬料」等として、扶養者(加入者)に支給されます。
→それぞれ事前に各健康保険組合等に確認するようにしましょう。
手元に亡くなった人の保険証がある場合は、Web上で検索してみるのもひとつです。
1-2.〈手続き方法〉一般的な必要書類は4つ
葬祭費を請求するには、1-1章で紹介した窓口に必要書類を提出します。
窓口によって変わることもありますが、一般的に必要になるのは以下の4つです。
各書類について、コピーで対応してもらえるところ、原本を返してもらえないところなど様々であるため、手続きする際に事前に確認しておきましょう。
2.【要注意】支給してもらえない4つのケース
葬祭費の請求をしても、支給されないケースが4つあります。
それぞれ解説していきます。
2-1.死亡日に健康保険に加入していなかった場合
退職や離職等、何らかの理由で死亡日時点で健康保険組合に加入していなかった場合は、葬祭費の支給を受けることはできません。
支給対象かどうか不安な場合は、請求先に問い合わせましょう。
※退職してから3か月以内であれば支給してもらえる場合もあります。
2-2.他の保険等から葬儀に関する費用が支払われる場合
他の保険等から葬儀に関する費用が支払われる場合、(ここでご紹介している)健康保険組合からの葬祭費の支給を受けることはできません。
※他の保険等の一例
- 交通事故が原因で亡くなり、葬儀に関する費用が賠償金から支払われる場合
- 勤務中の事故が原因でなくなり、労災保険から支払われる場合
- 国民健康保険以外の健康保険(共済組合など)に被保険者本人として1年以上加入していた人が、国民健康保険へ切替後3か月以内に亡くなった場合で、以前の保険組合から支給される場合
つまり、複数の機関から葬祭費に関する支給を受けることはできない仕組みになっています。
該当する場合はご注意ください。
2-3.領収書について紛失または不備があった場合
葬儀費用の領収書は、葬儀の事実を確認するために提出します。
誤って紛失したり、記載内容に不備があったりすると、事実確認ができず支給を受けることができない場合があります。
領収書を受け取ったら、以下の事項がもれなく記載されているか確認するようにしましょう。
<確認事項>
- 喪主の名前(フルネーム)
- 葬儀が行われた日
- 葬儀にかかった金額
※不備の例:喪主の氏名が名字だけ、氏名欄が空欄、など
領収書は再発行してもらえるケースは非常に少ないです。
紛失にはくれぐれもご注意ください。
2-4.葬儀を行った日から2年経過している場合
葬祭費の請求は、「葬儀を行った日から2年以内」が申請期限として法律で決められています。
申請期限について、各健康保険組合からお知らせが来ることも基本的にはありません。
葬儀の喪主が、忘れず“すみやかに”申請するようにしましょう。
3.まとめ
葬祭費の支給を受けるには、亡くなった人が加入していた保険組合によって「だれが」「どこに」請求するのかが変わります。
亡くなった人が死亡日時点に加入していた保険を確認し、請求するようにしましょう。
特に、葬儀の領収書等は必要になることが多いです。
失くさないためにも、また葬儀から2年以内に忘れず支給を受けるためにも、葬儀後速やかに請求することが大切です。
その他の死亡後の手続きについては、こちらをご参照ください。