目次【本記事の内容】
1 生命保険と相続財産
1−1 保険契約によって決まる!ポイントは‘‘誰に”対して給付される保険金なのか
少し前置きになってしまいますが、一言で「保険金」と言っても死亡保険金、満期保険金、入院給付金、医療給付金、手術給付金、高度障害保険金、特定疾病保険金 ・・・というように、各保険会社には多種多用な保険金が存在します。
これら保険金に相続が関わってくると、その種類により相続財産にあたるかあたらないか変わってくるので、まずは保険金の種類をきちんと把握することが必要です。
その判断の根拠となるのが、“誰に”対して給される保険なのかということです。
1−2 相続財産にあたる場合
これは死亡した方に対して支払われる保険金になります。
例えば、入院保険金、手術給付金で給付対象者が契約者本人になっている場合です。
同じ入院給付金であっても、受取人が特定の方やご家族に指定されている場合は相続財産に当たりませんのでご注意ください。
つまり何に対する保険金なのか、ではなく誰に給付される保険金なのかいうことがやはり大事になってきます。
1−3 相続財産にあたらない場合
これは、死亡した方以外に給付される保険金になります。
例えば、死亡保険金で受取人が配偶者やお子様に指定されていた場合です。
稀に受取人指定がない場合などありますが、その場合は保険会社の規約や約款の度により受取人や受取順位も異なってきます。
必ず保険会社や代理店に保険の契約内容を確認するようにしましょう。
1−4 結論
それでは、今回のご相談についてお話を進めてまいりますが、「死亡保険金」ということでしたので、そちらに限定して回答させていただきます。
死亡保険金とは、被保険者が死亡をきっかけとして、予め指定しておいた死亡保険金受取人に対して給付する金銭です。
その目的はもちろん「当面のご遺族の生活を維持するため」です。
そしてこの死亡保険金の大きな特徴が、受取人の固有の財産になり相続財産にあたらない、すなわち相続人の間で遺産分割をする必要がない、もっと言い換えると遺産分割の対象外であるということです。
今回のご相談ではこの死亡保険金受取人が遺言書の中で変更されていたということですが、死亡保険金は相続財産にはあたりませんので、残念ながら遺留分侵害請求の対象からは除外されてしまいます。
※2020年7月より、相続に関する法改正が行われました。
法改正前に発生した相続については、改正前の法律【遺留分減殺請求】が適用されます。
法改正について詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
他にも相続に関する重要な法律が改正されています。
こちらも併せてご覧ください。
2.遺言書で受取人の変更は可能です!
1.から判断すると、今回の生命保険は相続財産に当たらないことがわかりました。
ここで気になるのは、遺言書で死亡保険金の受取人の変更ができるかどうかだと思います。
これは気になりますよね・・・
結論を申しますと、遺言書で死亡保険金の受取人の変更は可能です。
具体的な根拠としましては、平成22年に保険法が施行され、遺言書による死亡保険金の受取人の変更が可能であることが明文化されました。
【保険法第44条】
① 保険金受取人の変更は,遺言によっても,することができる。
② 遺言による保険金受取人の変更は,その遺言が効力が生じた後,保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ,これをもって保険者に対抗することができない。
②を逆手に取れば、お父様の後妻様が保険会社に連絡する前にご相談者様自身が受取人として手続きを完了してしまえば、死亡保険金を受け取ることは可能です。
ただ、後妻様と揉めることは容易に想像がつきますよね。
後妻様も遺言書の存在、受取人の変更についてはおそらく承知のことと思いますので。
ご相談者様としては、納得がいかない結果かとは思われますが、死亡保険金以外の相続財産の中できっちり遺産分割するということをお話をさせていただきました。
3 注意すべき保険契約
少し余談になりますが、今回の保険契約にはどうやら入院保障もあるようで、死亡前には数ヶ月の入院があったとのことで、入院給付金も支払われるようです。
入院給付金とは、そもそも「被保険者の入院中の資金の負担を軽減するために給付される金銭」であり、簡単に言いますと、お見舞い金のようなものです。
つまり、遺族に対しての給付を予定していたものではなく、あくまでも被保険者であるご本人(今回で言えばお父様)に対して支払われるものになります。
入院中にお亡くなられた場合、どうしても死亡保険金と同時に手続きを進めることが多く、どちらも「遺族」への給付を予定しているように捉えられがちですが、入院給付金は被保険者が自分のために保険料を支払い、入院した事実に対して給付されるものですので、被保険者(亡くなられた方)の財産、すなわち相続財産として扱います。
「相続財産=遺産分割の対象」ですので、つまり「遺留分侵害請求の対象」となります。
しかし、入院保険金についても、遺言書で受取人が指定されていた場合、遺言書が最優先されますので、その方が実際の受取人になります。
今回のご相談では保険金に関する遺言書の内容をお伺いしたのみでしたが、他に書かれている内容と相続財産を整理し、遺留分侵害請求をするのか、後妻様との遺産分割協議で分割するのか、やはりしっかりと話し合いをすることが大切かと思います。
当センターでは、基本的な相続手続きはもちろん、遺産分割協議や遺留分侵害請求までトータルサポートを承っております。
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4 まとめ
・死亡保険金の受取人について、遺言書の中での変更は有効である。
・死亡保険金は相続財産ではなく受取人の固有の財産になるので、遺留分侵害請求は出来ない。
・入院給付金については相続財産にあたるので、遺留分侵害請求が出来る。
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