相続税の計算は自分でできる?計算方法と考え方を具体例でわかりやすく解説

父が亡くなり、おおよその財産額はわかっています。相続税はかかるのか、かかるとしたらいくらくらいになるのか、自分で計算する方法を教えてください。

  • おおよその財産額がわかれば、相続税がかかるかどうかやおおまかな税額は自分で計算できる
  • 相続税は「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を超えた分に対してかかる
  • 概算の相続税額は、①法定相続分で分ける→②それぞれの取得額に税率をかける→③合算するという3ステップで求められる
  • 配偶者は「税額軽減制度」により、法定相続分または1.6億円までのいずれか多い金額まで相続税がゼロになる

 

結論からお伝えすると、おおよその財産額がわかっていれば、相続税がかかるかどうかの判断や、おおまかな税額(概算)は、ご自身でも計算できます

 

難しいのは、その手前にある各財産の評価額(特に不動産や株式など)を正確に算出する部分や、配偶者の税額軽減・二次相続といった特例をどう適用するかの判断です。

 

こういった難しいところはやはり専門家の領域になってしまいますが、「だいたいいくらくらいかかりそうか」をつかむだけであれば、考え方さえ分かれば十分にご自身で計算できます。

 

この記事では、相続税の計算方法を【5つのステップ】に分けてわかりやすく整理し、さらに家族構成のちがう【3つの具体例】(①配偶者と子、②子のみ、③兄弟姉妹が相続するケース)を使って、実際の計算の流れを順番に解説します。

 

読み終えるころには、ご自身のご家庭でおおよそどれくらいの相続税がかかりそうか、イメージできるようになっているはずです。

 

※本記事は正確な税額を求めるものではなく、概算をつかむための「計算の考え方」を解説するものです。正確な評価・申告については税理士にご相談ください。

 

1.相続税は自分で計算できる?→概算なら、自分でできます

まずお伝えしたいのは、そもそも相続税の計算には、数字を当てはめれば一発で答えが出る「方程式」のようなものはないということです。

 

そして、財産の種類や相続人の構成によって考え方が変わるため、結果的に「難しそう」と身構えてしまう方が多いのも無理はありません。

 

では何が難しいのか。それは、

税額計算そのものではなく、その手前にある「各財産の評価額がいくらなのか」

にあります。

 

預貯金や現金は、基本的に残高そのままの金額で計算できます。

一方で、土地や建物などの不動産は「相続税評価額」という独自のルールで評価する必要があり、土地の形状や立地によって評価方法が変わります。

株式や投資信託も、亡くなった日の株価などをもとに評価します。

 

つまり、計算式に当てはめる”もとの数字”を正確に出すところに、専門的な知識が必要になるのです。

 

整理すると、次のようになります。

  • 自分でもできる部分:基礎控除の計算、おおよその税額(概算)の把握
  • プロに任せたほうがよい部分:不動産など各財産の正確な評価、配偶者の税額軽減や二次相続をふまえた分割方法、実際の申告

 

こうした財産評価や特例判断の複雑さから、多くの方が税理士などの専門家に計算・申告を依頼しています。

 

とはいえ、書籍やインターネットで調べて計算方法を理解すれば、ご自身で計算・申告することも不可能ではありません。

 

それでは、相続税が実際にどんな順番で計算されるのか、全体の流れから見ていきましょう。

 

2.相続税の計算方法(考え方)

相続税の計算はとても複雑であるため、ここでは一番基本となる計算についてのみご紹介します。

 

※計算の考え方であり、正確な相続税額を求めるものではありません。ご了承ください。

 

①まず、基礎控除を計算する

冒頭でもお伝えしたとおり、相続税には基礎控除があり、相続財産に対して基礎控除額を上回った分に相続税が課せられます。

 

相続税の基礎控除の計算式

 

ここからは、以下の例で計算の流れを見ていきましょう。

【前提条件】

  • 相続財産の総額:1億1,400万円
  • 被相続人(亡くなった人):夫
  • 相続人4人:妻、子A、子B、子C

 

まず、基礎控除額を計算します。

3,000万円 + 600万円 × 4人 = 5,400万円

つまり、1億1,400万円のうち5,400万円までは非課税です。

 

つぎに、相続財産の総額から基礎控除をマイナスし、相続税の課税対象となる金額を算出します。

1億1,400万円 − 5,400万円 =6,000万円

 

この6,000万円が、相続税の課税対象となる金額(課税遺産総額)です。

 

②基礎控除額を上回る相続財産(課税遺産総額)を、法定相続分で分ける

課税遺産総額6,000万円を、法定相続分に従って各相続人に振り分けます。

  • 妻:2分の1 = 3,000万円
  • 子A:6分の1(2分の1 × 3分の1)= 1,000万円
  • 子B:6分の1 = 1,000万円
  • 子C:6分の1 = 1,000万円

と算出します。

基礎控除額を上回る相続財産を、法定相続割合で分ける

 

③各人の取得額に税率をかけ、相続税を計算する

②で算出した金額に、相続税の速算表の税率をかけて、控除額を引きます。

相続税の税率

(税率は、国税庁のHP(No.4155 相続税の税率)にて確認できます。)

 

この速算表を使って、各人の相続税を計算します。

  • 妻(3,000万円): 3,000万円 × 15% − 控除額50万円 = 400万円
  • 子A(1,000万円): 1,000万円 × 10% = 100万円
  • 子B(1,000万円): 1,000万円 × 10% = 100万円
  • 子C(1,000万円): 1,000万円 × 10% = 100万円

 

※表の「控除額」とは、速算表を使って簡便に計算するための調整額です。妻の場合、3,000万円のうち1,000万円までは10%、残りの2,000万円に15%がかかりますが、速算表では全額に15%をかけてから控除額50万円を引くことで、同じ結果になる仕組みです。

 

 

④各人の相続税を合算する

400万円 + 100万円 + 100万円 + 100万円 = 700万円

これが、この家族全体の「相続税の総額」です。

 

⑤実際の財産の取得割合に応じて、個々の相続税を計算する

④で求めた相続税の総額700万円を、実際に各人がどれだけ財産を取得したかの割合で振り分けます。

 

■法定相続分どおりに分ける場合

  • 妻:700万円 × 2分の1 = 350万円
  • 子A:700万円 × 6分の1 = 約116.6万円
  • 子B:700万円 × 6分の1 = 約116.6万円
  • 子C:700万円 × 6分の1 = 約116.6万円

 

※配偶者は「税額軽減」の制度で相続税ゼロになることも

配偶者の場合、相続税の税額軽減の制度があります。

相続財産の総額に対して、次のいずれか多いほうの金額までであれば、配偶者の相続税はかかりません。

  • 配偶者の法定相続分まで
  • 1.6億円まで

ただし、この制度を使うには次の要件があります。

・戸籍上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
・申告期限(被相続人死亡から10か月)までに遺産分割が確定していること
・相続税の申告書を提出すること

※なお、配偶者の税額軽減を適用する場合は、相続税がゼロであっても申告が必要です。

 

今回の例でいえば、妻の取得額は法定相続分の範囲内ですので、この特例を適用すると妻の相続税はゼロになります。

(配偶者に適用される制度であるため、子A・B・Cの3人には変わらず相続税が発生します。)

 

また、配偶者が多く相続すると、配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)で子どもの相続税負担が大きくなる場合があります。1次相続だけでなく、2次相続までトータルで考えることが大切です。

 

3.まとめ

おわかりの通り、相続人ごとの相続税の金額は「どのくらい相続するか」という実際の相続割合と連動し、

  • 相続財産を多くもらう人は相続税も多くなる
  • 全く相続しない人は相続税も一切ない

と(基本的には)なります。

 

実際の申告は税理士がサポートするとしても、だいたいどれぐらいの相続税になるのか概算を知る上で、この記事が少しでもお役に立てると幸いです。

 

相続税の計算、申告でお困りの場合は、税理士に相談しましょう。

当センターにも相続税に強い税理士が在籍しています。お気軽にご相談ください。

>>相続税申告が必要かわからない方はこちら

 

 

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この記事を執筆した専門家

この記事を執筆した専門家 滝 亮史
  • 税理士

滝 亮史

Ryoji Taki

近畿税理士会 東支部 第107863号
大阪府中小企業診断士会 第411767号

個人の相続税申告・生前対策をはじめ、法人の事業承継やM&A、コンサルティングまで多岐にわたる分野で活動する税理士・中小企業診断士。
CISコンサルティング税理士法人 代表税理士として、目先の税金対策だけでなく、ご家族の未来がより豊かになるよう常に一歩先を見据えて親身に寄り添います。

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