未成年のお子様がおられるとのこと、ご主人を亡くされて今後の生活にも不安を感じておられるかと思います。
その上でたくさんの借金があるとなれば、期限内に滞りなく相続放棄をしておかないと、その借金を背負って生活していくことになってしまうかもしれません。
今回のご相談のキーポイントはお子様が未成年というところかと思いますが、その場合でももちろん相続放棄をすることは可能です。
目次【本記事の内容】
1.状況によって未成年でも相続放棄が可能!
まず、相続関係を考えてみますと、次のような図で表すことができます。
(相続関係図)
亡くなられたのが夫Aで、配偶者である妻Bとそのお子様Cの2人が相続人として遺産分割協議などを行うことになります。
この場合、まず大切なことは、妻Bが子供Cの親権者(法定代理人)として署名捺印することができない点です。
どういうことかというと、配偶者の妻Bも相続人であるため、子供Cの代理人になってしまうと配偶者Bと子供Cはいわゆる利益相反の関係になるため、配偶者Bが子供Cの代理人として意思決定をすることはできないということです。
そこで登場するのが特別代理人です。
(家庭裁判所で選任し、未成年の子に代わって相続手続きをします。)
では、今回のケースで未成年の子供Cが相続放棄をする場合、特別代理人の選任が必ず必要になるのでしょうか?というと、
答えはYES、NOどちらとも言えます。
なぜかというと、「だれが相続放棄するのか」という状況によるからです。
もう少しわかりやすくご説明しますと、今回のご相談は大きな枠組としては「相続放棄」ですが、実はいくつかのパターンが考えられます。
- 配偶者Bだけが相続放棄する場合
- 子供Cだけが相続放棄する場合
- 配偶者Bと子供Cの両方が相続放棄をする場合
以下、それぞれの場合ごとに解説していきます。
1-1.配偶者だけが相続放棄をする場合
配偶者Bだけが相続放棄をする場合、未成年ではないために、当然ながら特別代理人は不要です。
ちなみに、配偶者Bの放棄が完了した後に、未成年の子供Cも相続放棄するとなれば、特別代理人は「不要」です。
なぜなら、配偶者Bは相続放棄が完了した時点で「相続人としての地位を失う」ことになるからです。
相続人でなくなるということは相続する権利がなくなるということであり、その時点で配偶者Bは未成年の子供Cの親権者として、代わりにハンコを押すことができるようになります。
つまり、このケースでは未成年者が相続放棄をするために、特別代理人の選任は不要と言えます。
1-2.未成年者である子だけが相続放棄をする場合
配偶者Bは相続放棄せず(=相続する)、子供Cだけが相続放棄をする場合、子供Cは放棄をすれば当然「一切何も相続できなくなり」ます。
しかし借金などのマイナスがあっても子供Cだけが相続放棄をすることは認められません。
何故かというと「利益相反」になるからです。
(利益相反は法律行為自体や、外形的な状況からみて決められます)
つまり、このケースでは相続放棄をするためには特別代理人の選任が必要になります。
1-3.配偶者と未成年者の両方が相続放棄をする場合
両方が一緒に放棄する場合です。
これは結論を先に申しますと、「特別代理人の選任は不要」です。
視点は常に「利益相反」、「子供が放棄をすることで配偶者に利益があるか」であるため、配偶者と子が一緒に放棄をするのであれば、そもそも配偶者自身も相続権を失うことになりますので、自己の利益のために子の相続権を侵害するということは起こり得ません。
そのため、特別代理人の選任をせず、配偶者が子供の法定代理人として相続放棄の申立てができるということです。
2.まとめ
- 配偶者Bだけが相続放棄する場合→特別代理人の選任不要
- 未成年者である子供Cだけが相続放棄する場合→特別代理人の選任必要
- 配偶者Bと未成年者の子供Cの両方が相続放棄をする場合→特別代理人の選任不要
未成年者の相続放棄といっても、具体的にどういう相続関係で「だれが相続放棄するのか」というケースごとに考えると、特別代理人の選任の要不要が見えてきます。
ですが、特に初めての相続の場合、ここまで深く考えて行動することは難しくなってきますので、「この場合はどうなるのかな?」「こんなことできるのかな?」など、気になる点はいつでもお気軽にご相談いただければと思います。
たくさんの事例がある当センターだからこそ、あらゆる場面や状況でお手伝いやアドバイスをさせていただけると思います。