大黒柱であるご主人が、働き盛りの年齢で亡くなられたというご相談です。
お子様もこれから高校、大学などが控えておられると思いますので、いろいろとお金がかかることを考えると大変ご不安を抱えておられることと思います。
そんなときに頼りになるのが「年金」です。
日本の公的年金制度は「国民皆年金制度」となっており、20歳以上60歳未満の日本在住者であれば、就労状況の有無に関わらず、いくつかある年金のいずれかに加入し、保険料を納める義務があります。
年金を納めていた方(被保険者)がお亡くなりになられた場合、もちろんそれ以降は納付をすることができなくなるわけですので、年金の種類に関わらず必ず何かの手続きが必要であるということを覚えておきましょう。
(一方、年金を受け取っている方の場合は別途お手続きが必要になります。詳細については改めてご説明します)
1.遺族年金とは
今回ご相談いただいたケースでは「遺族(基礎)年金」という年金が支給の対象となりますが、
- 国民年金加入者または老齢基礎年金の受給資格を満たした人
- 年金受給手続きをしないうちに亡くなったとき
- その人によって生計を維持されていた子どもがいる配偶者、配偶者がいない場合はその子ども
に対して支給されます。
ここでいう「子」とは、18歳になったときの年度末(3月31日)まで、または1級・2級の障害のある20歳未満の子どものことを指します。
今回はご主人様が自営業者ということですので、
- 国民年金の納付義務者かつ主たる生計者である
- ご相談者様は専業主婦
- 未成年のお子様が2人いらっしゃる
とのことで、上記の「遺族(基礎)年金」の受給資格を満たしていることがわかります。
一方、
- お子様のおられないご夫婦
- お子様が18歳以上
- 未成年のお子様がおられても、亡くなられた方が主たる生計者でなかった(専業主婦の方が亡くなられた場合など)
は、受給資格に該当しませんのでご注意ください。
2.支給額の計算方法
では、気になるのはその支給される年金額ですよね。
実際にどれぐらい支給されるのかについてご説明します。
お子様のおられる奥様の場合、まず、基本的な金額が792,100円/年になります。
そして、お子様の人数により加算額が決まります。
お子様が1~2人の場合:1人につき227,900円/年の加算。
お子様が3人以上の場合:3人目以降1人につき75,900円/年の加算。
よって、今回のケースで考えてみますと、18歳未満のお子様が2人おられますので、
792,100円 + 227,000円 × 2人 =1,247,900円/年
となります。
計算方法はわかりましたでしょうか?
ちなみに、親がいないお子様のみの場合、
お子様が1人の場合:792,000円/年。
お子様が2人の場合:上記に、227,900円/年の加算。
お子様が3人以上の場合:上記に、1人につき75,900円/年の加算。
よって、親がいない4人兄弟の場合でしたら、
792,000円 + 227,900円 + 75,900円 × 2人 = 1,171,700円/年
となります。
3.手続き窓口
では、実際に必要なお手続きについてご説明いたします。
まず、手続きの窓口は2つあります。
①国民年金第1号被保険者の場合:市区町村役場
第1号被保険者とは、今回のご相談者様のように一般的な国民年金加入者にあたります。
②国民年金第3号被保険者の場合:年金事務所
第3号保険者とは、厚生年金・共済組合の加入者(=第2号保険者)に扶養されている配偶者にあたります。
よって、亡くなられた方が国民年金のどの被保険者であるか、年金手帳や通知書などで確認し、該当する窓口へ連絡してください。
必要な書類等は個々の状況により異なりますので、必ず問い合わせをして確認しましょう。
手続きをする時期としては、「すみやかに」連絡することです。
なぜなら既に申しました通り、亡くなるまでは年金の納付義務がありますので、すみやかに連絡することで過払いや未払いといったトラブルを防げます。
また、実際に遺族年金の申請をしてから支給されるまでに数か月の期間を要します。
遺族年金は遺されたご遺族の方の生活を支える大切なものですので、1日でも早く支給開始となるよう少しでも早く手続きをしておいた方が懸命です。
4.その他の年金制度
年金をきちんと納めていたのに残念ながら「遺族(基礎)年金」受給資格がない方でも、ほかにもいくつか遺族の方が受け取れる年金制度がありますのでご紹介します。
4-1.寡婦年金
「寡婦年金」とは、
- 老齢基礎年金を受ける資格期間を満たしている人が亡くなった時
- その人によって生計を維持され、
- 10年以上婚姻関係にある妻に対し、
- 60歳から65歳になるまで支給される制度
を寡婦年金といいます。
1つ目の「老齢基礎年金を受ける資格期間を満たしている」という条件ですが、この書き方ではちょっとよくわからないですよね…
ここでいう「老齢年金を受ける資格期間を満たしている」人の条件とは、
- 国民年金第1号被保険者
- 保険料を納めた期間(免除された期間があれば合算可)が25年以上
- 老齢年金等を受け取っていない
- 障害基礎年金の受給権を持っていない
これら全てを満たしていることです。
(これでもわかりにくいですよね…すみません…)
とりあえず一番わかりやすいのが「60歳から65歳になるまで支給される」ということですので、今回のご相談ではご主人様がお亡くなりになられた時点で奥様が60歳未満のため、支給の対象外でした。
※実際には60歳に達した日の属する月の翌月(例えば3月5日生まれであれば4月1日)から、65歳に達する日の属する月までが受給対象期間となります。
【支給金額】
ご主人様の老齢基礎年金金額の4分の3です。
【手続きの窓口】
市区町村役場となります。
【必要書類等】
個々の状況により変わりますので、必ず事前にお問い合わせください。
4-2.死亡一時金
「死亡一時金」とは、
- 国民年金第1号被保険者として保険料を3年以上納めた人のうち、
- 老齢基礎年金、障害基礎年金を全く受け取らずに死亡し、
- 遺族基礎年金を受けられない場合に支給される制度
を死亡一時金といいます。
こちらの支給対象となる方は、生計を同じくしていた方のうち、
- 配偶者
- 子
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
の順番で支給対象となります。
「生計を同じくしている」ということが絶対条件ですので、配偶者がいる、お子様がいるというだけで支給対象になるわけではないということです。
【支給金額】
保険料納付済期間及び免除期間によって変わります。
【手続きの窓口】
市区町村役場となります。
【必要書類】
個々の状況により変わりますので、必ず事前にお問い合わせください。
寡婦年金、死亡一時金両方の受給条件を満たしている方は、どちらか一方を選択することになります。
両方の条件を満たしていれば両方受給することができるわけではありませんのでご注意ください。
5.まとめ
以上のお手続きは、いずれも国民年金を納めていた方のうち、年金を受け取っていない方が対象となるお手続きになります。
すでに年金を受け取っていた方、厚生年金や共済年金を納めていた方はお手続きが異なります。
ここで一気にご説明すると非常に複雑になりますので、こちらは別途お伝えいたしますね。
■■■■■■ まとめ ■■■■■■
- 国民年金を払っていた、かつ、年金を受け取っていない方が亡くなられた場合、ご家族の状況により「遺族基礎年金」「寡婦年金」「死亡一時金」などを受け取れる制度がある。
- 年金手帳などで年金番号を把握し、市区町村役場 または 年金事務所 に連絡をする。
- 手続きはすみやかに行う。