今回のご相談は
- 生命保険金の控除
- 相続税の期限内申告
- 全てを相続する
というところがポイントかと思います。
1.生命保険金は「みなし相続財産」
結論から申しますと、ご相談の内容では、お姉様についての相続税の申告義務は「ありません」。
まず、お母様の相続について整理しておきますと、
- 遺言に従いご相談者様が全てを相続する
- お姉様が取得した財産は「みなし相続財産」と呼ばれる生命保険金の500万円のみ
であるということです。
1-1.生命保険金の非課税枠
生命保険金については相続税の計算上、「500万円×法定相続人の数」までは非課税とされています。
今回のお母様の相続税の計算の場合で計算してみますと、500万円×2名=1,000万円までは相続税の対象となりません。
つまり、お姉様が今回受け取る500万円の保険金ついては、相続税の対象となる金額は0円(保険金500万円<非課税1,000万円)ということになります。
また、この場合は非課税の枠がまだ500万円残っていますので、ご相談者様も同様に500万円の死亡保険金を受け取ったとしても、その500万円も非課税の範囲となります。
上記のケースで申しますと、ご相談者様500万円、お姉様500万円の場合にどちらも非課税というお話でした。
では、ご相談者様0円、お姉様1,000万円のときはどうなるのでしょうか?
実は、この場合も全て非課税の範囲となります。
生命保険金の非課税枠については「500万円×法定相続人の数」とお伝えしましたが、この計算式によって求められる金額はその相続における生命保険金の非課税枠の「上限」です。
つまり、「1人500万円が上限」ではなく、「2人で1,000万円」が上限ということです。
1,000万円までの保険金であれば、どちらがどれだけ受け取ったとしても全て非課税の枠になります。
併せてご参考いただければと思います。
【参考条文】相続税法
第12条(相続税の非課税財産)
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
五 相続人の取得した保険金については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分
イ すべての相続人が取得した保険金の合計額が500万円に被相続人の法定相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という。)以下である場合
相続人の取得した保険金の金額
ロ イに規定する合計額が保険金の非課税限度額を超える場合
保険金の非課税限度額に合計額のうちに相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額
1-2.相続税の申告対象者かどうか
では次に、お姉様が相続税の申告期限内(相続開始から10か月以内)に相続税申告書を提出する義務があるかどうかの確認をします。
先ほどの計算で、お姉様の相続税の対象は0円となっているため、当然ながら相続税を納税する必要はありません。
納付すべき相続税額がない場合には、たとえ相続人であったとしても相続税の期限内申告書を提出する義務もありません。
従って、お姉様は納税・申告ともに不要ということになります。
相続によって死亡保険金500万円を受け取ったお姉様は、税務署に申告する必要もなく、納税もなく今回の相続が完了したということです。
【参考条文】相続税法
第27条(相続税の申告書)
相続又は遺贈(被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。)により財産を取得した者及び被相続人に係る相続時精算課税適用者は、被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に相続税の期限内申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
ただし、お姉様には「遺留分(いりゅうぶん)」という最低限の財産を受け取る権利(今回のケースでは全財産の4分の1)があるため、全財産をご相談者様に相続させるという公正証書遺言を不服として遺留分を請求し、その請求に基づいて財産を取得した場合には、相続税の申告書を提出する義務が生じます。
ご注意ください。
2.まとめ
相続税の関しては、1円でも相続した時点で相続税を支払わなければならないと思われている方も多いかと思います。
しかし、そもそも基礎控除の範囲内(3,000万円+600万円×法定相続人の数)であれば相続税の対象外ですし、死亡保険金については「500万円×法定相続人」の数まで控除がありますので、その範囲内での受け取りのみであれば相続税の申告は不要です。
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