【2024年法改正】死亡後の不動産(家/土地)の名義変更には3年の期限アリ!

何年も前に父が他界しましたが、不動産の名義変更には期限はないと聞いたので、今も父名義のまま私がひとりで住んでいます。このまま名義変更しなくても大丈夫でしょうか?本当に期限はないのですか?

  • 不動産相続による名義変更の期限
    現状:厳密な期限はない(記事執筆当時2022年現在)
    将来:法改正により期限が設けられる(2024年施行予定)
  • 不動産の名義変更を放置した場合、デメリットしかない

 

亡くなった人が不動産を所有していた場合、相続発生時に名義変更(相続登記)をする必要があります

(正確には「相続による所有権移転登記」と言います。)

 

不動産は家や土地だけでなく、畑や田、山林などすべてが対象です

 

たしかに相談者の方の言う通り、相続登記の厳密な期限はありません。

しかしそれは2022年現在のことです

法改正により、2024年より相続登記が義務化されることになりました

この改正では、それ以前に発生した相続も対象となります。

 

「まだ先だから大丈夫」と安心してはいけません。

相続登記をせず放置したままにするリスクは、他にもあるのです。

 

この記事では、不動産の名義変更のうち、特に期限について詳しく解説していきます。

 

1.相続による不動産の名義変更に期限はない(※2022年時点)

不動産の名義変更(相続登記)は、その不動産のある地域を管轄する法務局で手続きします

 

例えば「相続人が自分ひとりだから、自動的に不動産の名義も自分に変わる」というようなことはありません。

必ず法務局で手続きをする必要があります

 

そして、その名義変更をいつまでにしなければならないのかという期限については、2022年現在、相続による不動産の名義変更に厳密な期限はありません

 

期限がないため、もちろん罰則等もありません。

 

しかし、実は近い将来法改正が予定されており、明確な手続き期限が設けられる見込みです

(2024年4月施行予定)

 

つまり、今後は不動産の名義変更が義務化されるため、手続きしないことによる罰則も発生する可能性があるということです。

(法改正について、具体的な期限や罰則について、詳しくは3章で解説しています。)

 

この法改正によって一気に相続登記が進むことになると思われますが、このような法改正に関わらず、そもそも不動産の名義変更は絶対に早く済ませておくことをお勧めします

 

手続きをしないまま放置していても、それにメリットは一切ありません。

むしろ、圧倒的にリスク(デメリット)のほうが多いです。

 

その具体例を、次章で紹介していきます。

 

2.【悲劇】不動産の名義変更を放置した結果…

相続による不動産の名義変更をせずに放置していた場合、具体的にどのようなリスク(デメリット)があるのでしょうか。

 

当センターには毎日たくさんの相続の相談をいただきますが、そこで実際にお聞きしたリアルな事例を5つご紹介します。

 

決して同じことにならないように、是非参考にしてください。

 

  1. 不動産の買い手が見つかったのに売却ができない
  2. 相続関係が複雑になり、名義変更そのものが難航する
  3. 相続人が認知症等になってしまった場合、遺産分割協議ができない
  4. 名義変更に必要な書類が取得できず、特殊な書類を求められる
  5. 不動産が、債権者により差し押さえられた!?

 

2-1.不動産の買い手が見つかったのに売却ができない

名義変更しないまま放置されるケースとして、誰も住む予定がない場合に、特に多い傾向があります。

 

そして、「空き家のまま放置するぐらいなら売却してしまおう」と思ったとき、実は亡くなった人の名義のままでは売却することができません

 

必ず、亡くなった人から相続人へ名義変更をしてからの売却という流れになります。

 

名義変更をするには、相続発生時の相続人全員分の戸籍や印鑑証明書が必要になります。

(相続人が複数いれば遺産分割協議をする必要もあります。)

 

相続関係や相続開始時からどれだけ期間が経過しているかによって、この書類の収集作業に時間を要することが多くなります。

 

なので、例えば「売ってもらえませんか?」と声をかけてもらったタイミングや、価格の変動を受けて「今売りたい!」という時が来ても、名義変更の手続きに時間がかかってしまい、そのチャンスを逃してしまうことが十分にあり得るのです。

 

2-2.相続関係が複雑になり、名義変更そのものが難航する

相続開始からの時間の経過とともに、相続人であった人が年齢や病気などで亡くなってしまう可能性も出てきます。

 

相続手続きが完了する前に相続人が亡くなると、その権利(相続権)がその亡くなった人の子や孫などにどんどん移っていくということが発生します。

 

相続開始からの時間の経過とともに、相続人であった人が年齢や病気などで亡くなってしまう可能性も出てきます

上図の例でいくと、父の相続が開始したとき、相続人は【母、自分、弟】の3人です。

父の相続開始後すぐに名義変更をしておけば、この3人だけの協力で手続きを終えることができました。

 

しかし、その後、名義変更をしないまま母と弟が亡くなってしまった場合、母と弟の相続権が母と弟の相続人に移ってしまうことになるのです。

 

相続人について一覧表でまとめると、下記の通りです。

元々の相続人 実際に手続きをする時の相続人
異父兄弟
(母の相続権が母の実子に引き継がれる)
自分 自分
弟の妻とその子ら
(弟の相続権が弟の妻と子に引き継がれる)

 

相続権が移り、相続関係が複雑になるということは、不動産の名義変更に関わる人も書類も増えるということです。

 

相続権が移ることによって、

  • 今回の母親のように前婚時の子が相続人になることもあったり
  • 会ったことのない相続人が出てくることがあったり
  • 連絡先がわからず手続きが進められなかったり

その人たちと遺産分割協議をするとなると、想像以上の手間と時間を要します。

当センターの今までの経験では、相続人が30人以上にもなってしまっているケースもありました。

 

名義変更をせずに放置するということは、そういうリスクが潜んでいるということを理解し、名義変更はできるだけ早く済ませるようにしましょう。

 

2-3.相続人が認知症等になってしまった場合、遺産分割協議ができない

相続人が高齢になってくると認知症のリスクも高まり、意思確認ができない人が出てくる可能性もあります。

 

意思確認ができない(意思能力がない)場合は、遺産分割協議ができず、代わりに成年後見人を選任する必要が出てきます

 

【成年後見人制度とは】

成年後見人とは、認知症等で意思能力がない人の代わりに、法的な決断や財産管理をする人のことです。

意思能力がない人が不利益な契約を結ぶことや、悪徳商法などから守るための制度です。

 

成年後見人を選任するには家庭裁判所で申立てを行う必要があり、その手続きを終えてようやく、(認知症の相続人の代わりに成年後見人が参加することで)遺産分割協議をすることができます。

 

いざ「名義変更しよう!」と思った時に、このように、その前段階の手続きが多数発生してしまう可能性があるのです。

 

2-4.名義変更に必要な書類が取得できず、特殊な書類を求められる

相続における不動産の名義変更では、亡くなった人の住民票(除票ともいいます)が必要になりますが、亡くなってから何年も経過している場合、役所が記録を廃棄している場合があります

(※除票以外でも廃棄の可能性はあります。)

 

廃棄等で必要書類が取得できない場合は、「廃棄をしたことを証する書類」を用意するなど、どのような書類が必要かを法務局と相談しながら進めていくことになります

 

その場合は専門的な知識が必要になるため、自分で手続きをしようと思っても、なかなか個人の方でそれら書類を揃えることは難しくなるかもしれません。

 

2-5.不動産が、債権者により差し押さえられた!?

相続人の中に借金のある人がいると、その債権者(お金を貸している人)から不動産を差し押さえられる可能性があります。

 

不動産の名義変更をしていないということは、相続人全員でその故人名義の不動産を共有している状態になっています。

 

そのため、債権者は借金をしている相続人の持分(の不動産の権利)を差し押さえることも可能なのです。

(※相続が開始している事実、また借金をしている人がその相続人であることを債権者が確認する必要はありますが)

 

差し押さえられてしまうと、不動産の売却等も困難になるため、やはり早めに手続きをしておく方が賢明です。

 

亡くなった人の家の名義変更について、最近「名義変更しないとダメなんですよね?」というご相談が増えてきて、今回の法改正が少しずつ認知されてきているように感じます。
2024年4月の施行までまだ少し猶予がありますが、期限に関わらず、ここでご紹介したような事例は実際にあった話ですので、「そうならないように」お役立ていただければと思います。
相続登記の義務化に伴い罰則も設けられる予定ですので(次章で解説します)、まだ名義変更していない土地や建物がある場合は、早急に手続きに取り掛かりましょう。

 

3.【2024年法改正】相続による不動産の名義変更に期限と罰則が設けられます

2024年(令和6年)4月1日、「不動産登記法の一部を改正する法律」が施行されることになり、それを受けて不動産登記制度が変わります。

 

今までは(現行法)相続開始後の不動産の名義変更に期限はなく、放置していても罰則等はありませんでした。

 

しかしこの法改正で、名義変更の期限と罰則が設けられることになりました

 

具体的にどう変わったかというと、

【期限】

相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をする必要があります。

(遺言によって不動産を取得した人も同様です。)

 

【罰則】

正当な理由がなく相続登記を怠れば、10万円以下の過料になります。

 

2024年(令和6年)4月1日の法改正前の相続に関しても適用される(※これ注意です!)ので、相続が発生して不動産を取得した人、あるいは取得予定の人は、忘れず法務局にて名義変更の手続きをしましょう。

 

4.まとめ

2024年(令和6年)の法改正により、不動産の名義変更に関して、手続きの期限と罰則が設けられます

 

とはいえ、罰則がなくとも不動産の名義変更を放置しているとリスク(デメリット)しかありません。

 

相続人の合意(遺産分割協議)や、必要書類等の用意ができるのであれば、できるだけ早く名義変更の手続きを進めましょう。

 

不動産の名義変更の専門家は司法書士です。

当センターにも相続登記を専門にしている司法書士がいますので、手続きの代行をご希望の場合はお気軽にご相談ください。

>>不動産の相続手続き代行についてはこちら

 

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この記事を執筆した専門家

この記事を執筆した専門家 成田 豊
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 土地建物調査士
  • 宅地建物取引士

成田 豊

Yutaka Narita

大阪司法書士会 第3864号
大阪土地家屋調査士会 第3298号
日本行政書士会連合会 第09262077号

司法書士、土地家屋調査士、行政書士、宅地建物取引士、法学修士という様々な資格を持つ不動産の相続手続きの専門家。10年を超える実績を持ち、不動産の贈与や売買はもちろん、合筆や分筆、解体後の滅失登記まで幅広く対応。成田法務事務所の代表司法書士。

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