- 封筒に入った自筆の遺言書を見つけたら
→勝手に開封しないこと
→まず封筒を確認し、相続人に連絡をすること
→そして家庭裁判所で検認の手続きをすること - これから遺言書を作成する人向けのアドバイス
「封筒に入った遺言書が見つかったけど、開封して良いの?」という声はよく聞きます。
様々なケースの相続手続きを代行してきた経験の中で、封筒に入った遺言書を見つけたというケースはたくさんあります。
封をされていると、どうしても中が気になり開けてみたくなりますが、開封はNGです!
なぜなら、封筒に入っている遺言書を見つけたとき、開封前に必要な手続きがあるためです。
それを「検認」といい、家庭裁判所で行う手続きです。
検認せずに開封してしまうと罰則もあるため、必ず検認を経て開封するようにしましょう。
この記事では、遺言書を見つけた後、中身を確認するまでの流れを具体的に解説していきます。
また4章では、これから遺言書を書く人向けに、封の仕方や書き方などのアドバイスもしています。
遺言書の作成を検討されている方も、ぜひお役立てください。
目次【本ページの内容】
1.〈封筒に入った遺言書を見つけたら〉まずやるべき2つのこと
封筒に入った遺言書を発見したら、まずやるべきことが2つあります。
それは、
- 封筒を確認すること
- 相続人に連絡をすること
です。
それぞれ詳しくご説明します。
1-1.封筒を確認すること
まずは「どのような封筒に入っているのか」を確認することです。
これはとても大切なことです。
「封筒」といってもいろいろな封筒があるためです。
なんのために封筒を確認するかというと、見つけた遺言書が「公正証書遺言」の場合があるからです。
公正証書で遺言書を作成した場合、作成した公証役場で封筒を渡され、そのまま保管されるケースがほとんどです。
(下記のような封筒に入っていると思います。)
このような封筒に入っている場合は「公正証書」という方式で作成された遺言であるため、封筒を開封し、中を確認しても問題ありません。
(その遺言書の内容は公証役場に保管されているため、万が一紛失したとしても全く問題ありません。)
一方、上記のような封筒ではない場合、つまり下図のような一般的な(市販の)封筒などに入っている場合は対応が異なるため注意が必要です。
この場合は、絶対に開封してはいけません。
- そもそも封がのり付けされていない場合
- 古い遺言書でのりがはがれてしまっている場合
もありますが、いずれにしても開封しない方が賢明です。
封筒の中を確認するのは、検認(3章で解説します)の手続きを経てからになります。
つまり、
- どのような封筒に入っているのか
- 封筒に何か文字が書いているか
- 封筒はしっかりのり付けされているのか
などを確認するようにしましょう。
公正証書遺言と自筆証書遺言の違いはこちらをご参照ください。
1-2.他の相続人に連絡すること
次にやるべきことは、相続人全員で遺言書があった事実を共有するために、すぐに他の相続人に連絡をすることです。
もしコソコソしたり隠したりすると、それが後になって大きなトラブルを引き起こす可能性もあります。
例えば、遺言書があることをすでに知っている他の相続人(Aとします)がいて、遺言書を見つけたあなたは、敢えて何も伝えずそのまま置いていたとすれば、どうでしょうか?
見つけていたにも関わらず、相続人Aに何も連絡しなかったあなたは、確実に悪者(何か悪いことをしようとしている)と思われても仕方ありません。
遺言書の内容に関係なく、遺言書を見つけた場合はすぐに他の相続人と共有するようにしましょう。
2.〈封筒に入った遺言書を見つけたら〉絶対にしてはいけない3つのこと
やるべきことがある一方で、絶対にやってはいけないこともあります。
それは、
- 遺言書を勝手に開封すること
- 遺言書を勝手に捨てること
- 遺言書の内容を書き換えること
です。
「知らなかった」では済まされず、取り返しのつかないことになる場合もあります。
順番に解説していきます。
2-1.絶対にダメ!遺言書を勝手に開封すること
1-1章でもお伝えしましたが、その封筒が市販の封筒など(公証役場でもらったもの以外)だった場合、勝手に開封するのは絶対にダメです。
これは民法でも明確に規定されています。
【民法1004条3項】
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
また、勝手に開封した場合の罰則まで民法では規定されています。
【民法1005条】
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
※検認については3章で解説します。
遺言書の開封については、罰則まで明確に規定されているということを覚えておきましょう。
遺言書を見つけた場合、開封するのは絶対にNGです。
※封がされていない(のり付けがない、のりが取れてしまっている等)場合、特に中を取り出したことによる罰則はありませんが、やはり開封したと思われる可能性もあるため、できればそのままの状態にしておきましょう。
2-2.絶対にダメ!遺言書を勝手に捨てること
当然ですが、遺言書を開封したかどうかに関わらず、見つけた遺言書を捨てるのは絶対にダメです。
そんなことする人いないだろうと思われるかもしれませんが、仮に封がなく中身を取り出し、自分が全く相続できない内容だったり、自分にすごく不利な内容だったりした場合、どうでしょうか?
「いっそのこと捨ててしまえば…」という気持ちになる人がいるかもしれません。
その遺言書がなければ、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、誰がどれだけ相続するかを決めることになります。
ですが、遺言書を捨ててしまった場合の罰則も、民法で規定があります。
【民法891条】
次に掲げる者は、相続人となることができない。
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
少し難しい言葉ですが、これを「相続欠格」といい、記載の通り「破棄」した人は相続人になることができなくなります。
遺言書を見つけた場合、捨てることは絶対にNGです。
2-3.絶対にダメ!遺言書の内容を書き換えること
最後に、人が書いた遺言書を、書き換えることは絶対にダメです。
2-2章の「破棄」と被りますが、書き換え(変造)についても民法で規定があります。
【民法891条】
次に掲げる者は、相続人となることができない。
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
変造も「欠格事由」に該当するため、書き換えた場合は相続人としての立場を失うことになります。
どんなに不利な内容であっても、遺言書を書き換えることは絶対にNGです。
3.検認の手続きとは(遺言書を開封するための必要な手続き)
ここからは、実際に遺言書を開封するための手続き「検認」について解説していきます。
検認とは、自筆の遺言書が見つかったときに、家庭裁判所でそれを開封と確認をしてもらう手続きのことです。
自筆の遺言書とは、そのまま「自分で書いた遺言書」のことであるため、果たしてそれが遺言書としての体裁を整えているかがわかりません。
(名前を書く、日付を書く、押印をするなど)
そこで、その自筆の遺言書を裁判所に提出し、遺言書として認めてもらうのが検認です。
自筆の場合は変造(書き換え)の恐れもあるため、公の場である裁判所でその内容を控えてもらうという目的もあります。
封筒に入った遺言書の場合は、検認手続きをすることで裁判所で開封され、内容を確認できるようになります。
検認の手続きの方法はこちらをご参照ください。
4.〈番外編〉これから遺言書を作成する人へアドバイス
封筒に入った遺言書を見つけた人が、どのような手続きが必要になるか解説してきました。
それも踏まえて、「これから遺言書を書こう!」と考えている方に向けて、封筒に関する注意点も含め、3つアドバイスをさせていただきます。
当センターが数々の遺言書作成をサポートをしてきた中で気付いた点、気を付けたい点をご紹介します。
4-1.遺言書は封筒に入れて封印し、一言添えよう
遺言書を作成したら、必ず封筒に入れて封印し、一言添えるようにしましょう。
封印については、遺言書として有効か無効かという点では必須ではありません。
しかし、やはり折りたたんだだけの紙は汚れたり濡れたりする恐れもあり、何よりも「誰でもすぐに内容を見ることができる」ことになります。
そうならないためにも必ずのり付けし、遺言書に押印したものと同じ印鑑で封印をするようにしましょう。
また、遺言書の開封には検認が必要になるため、その旨を封筒に書いておくと親切ですし、誤って開封してしまうリスクも下がります。
(上記画像の文章は一例で、内容が伝われば問題ありません。)
日付や名前、その下の印鑑は特に必須ではないため、ないからといって遺言書が無効になることはありません。ご安心ください。
封印がない場合ももちろん無効になるわけではなく、あくまでも「しておいた方がよい」ことになります。
4-2.遺言書の保管場所は誰かに伝えておこう
保管する場所は自分しかわからないようなところではなく、「ここに入れてあるからね」と誰かに伝えるようにしておきましょう。
「誰か」というのは特に指定はありませんが、遺言書によって財産を受け取る人に伝えておくのが一般的です。
保管するところは例えば、タンスの奥の奥、屋根裏、床下など、見つけにくいところに「隠す」イメージがあるかもしれませんが、そもそもその遺言書の存在をご自身(書いた本人)しか知らないこともあります。
その場合、いざというときに遺言書を見つけてもらうことができず、場合によっては他の荷物と一緒に処分されてしまう可能性もあります。
そうならないためにも、特に目立つところにポンと置いておく必要はありませんが、少なくとも誰かがその存在を知っている方が安心です。
遺言書の保管には「自筆証書遺言書保管制度」の活用がお勧め!
新たな保管の方法として「自筆証書遺言書保管制度」が開始されました。
これは、自筆の遺言書を法務局が預かってくれるという制度で、万が一の紛失が避けられるという安心感はもちろん、この制度を使えば検認の手続きをすることなく遺言書を使ってすぐに相続手続きができます。
詳細はこちらをご確認ください。
>>自筆証書遺言書保管制度(法務省)
4-3.遺言書はできる限り公正証書で作成しよう
これは、実際にたくさんの遺言書を見てきた当センターからのお願いになりますが、特に自筆にこだわる理由がない場合は、できる限り公正証書で作成してください。
なぜかというと、自筆の遺言は公正証書遺言に比べて無効になるリスクが高いからです。
自分の手で書くのが自筆証書遺言です。
一言一句間違えずに書けると断言できるでしょうか?
本当に、その書き方で遺言書としての体裁や要件を満たしていると断言できるでしょうか?
実際に遺言書を使って手続きをするのは、遺言書を作成したあなたではありません。
自分の意思や想いを書き残したのに、万が一無効と判断されてしまった場合はそれが実現できないことになります。
実際に相続手続きを受け付けるのは銀行や法務局(不動産の手続き)などであり、その遺言書で手続きを受け付けるかどうかは各所の判断に委ねられます。
自分では問題ない、間違いないと思っていても、手続き先の銀行が「この遺言では手続きできません。相続人全員の実印と印鑑証明書を揃えてください」と言われてしまえば、それに従うしかないのです。
そういったリスクを避けるためには、間違いなく公正証書遺言がお勧めです。
公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を聞き、それを文章にまとめてくれます。
公の場で作成した遺言書は検認の手続きも必要ありません。
5.まとめ
封筒に入った遺言書を見つけたとき、
- まずやるべきこと
- 絶対にやってはいけないこと
- 検認手続きが必要になること
をお伝えしてきました。
また、これから遺言書を作成する方へのアドバイスもさせていただきました。
遺言書は、遺言をする人から遺される人たちへの大切なメッセージです。
遺言者の意思が実現できるためにも、この記事を役立てていただければ幸いです。
遺言書について、ご質問やご相談はお気軽にご連絡ください。