- 遺言書は家の中だけでなく外も探そう
- 見つけた遺言書によって手続きが異なる
①家の中に自筆→家庭裁判所で検認が必要
②家の中に公正証書→検認不要
③法務局に自筆→検認不要
遺言書を作ったこと、遺言書を保管している場所について生前に話をしていれば別ですが、もしそれを全く知らなかった場合、具体的にどこを探せばよいのでしょうか?
「遺言書なんてないだろう」と思っていても、後から遺言書が見つかることもあります。
そうなると、せっかく進めていた遺産相続手続きをやり直すことになる可能性もあるため、手続きを始める前に、しっかりと遺言書を探すことをお勧めします。
遺言書は、遺された家族への大切なメッセージです。
その最後のメッセージを受け取るためにも、どこを、どのように遺言書を探したらよいかご紹介していきます。
目次【本ページの内容】
1.遺言書の【見つけた場所】と【様式】で後の手続きが変わる!
ここでは、どういうところに遺言書が保管されている可能性があるかについてご紹介していきますが、この
- どこにあった遺言書なのか
- 見つけた遺言書がどの様式であったか
がとても重要です。
なぜなら、それによって遺言書を見つけた後の手続きが変わってくるためです。
まずは、「どこ」にあるかについて見ていきましょう。
1-1.家の中をしっかり探そう!
当然のことですが、まずは亡くなった人が住んでいた家の中を、しっかりと探しましょう。
もっと具体的に、家の中で遺言書がある可能性が高い場所といえば、
- 自分の部屋の机、引き出し、タンスの中
- 通帳や貴重品などを保管している場所
- 鍵がかけられる収納場所(鍵付きの引き出しなど)
- 仏壇周り(※仏壇の奥に引き出しがあることも)
- 自宅内の金庫
などが挙げられます。
やはり「大事なもの」という認識がありますので、無造作に置いているよりも「保管されている」という感じが多いです。
亡くなった人と同居していた場合は、「どこに何があるのか」見えやすいため、ある程度探しやすいかもしれません。
しかし別居だった場合、あるいは亡くなった人とあまり付き合いがなく、家の中のどこに何があるかわからない場合は、探し物をするにも一苦労です。
このような場合は、遺品整理の業者に片付けを頼み、その作業の中で探してもらうのもひとつの方法です。
家の中を探すときは、遺言書と一緒に相続財産のヒントとなるものも探すとよいでしょう。
(例:不動産の権利証、固定資産税の納税通知書、預金通帳や取引明細、各種契約書類など)
その後の相続手続きが明確になり、進めやすくなります。
1-2.家の中にない場合は「家の外」も探そう!
遺言書は自宅にあると思い込みがちですが、決してそうとは限りません。
自宅以外の場所で保管されている可能性もあります。
【家の外に遺言書がある場合】
- 銀行の貸金庫の中
- 信託銀行にて管理・保管
- 実家
- 信頼している友人・知人に預けている
- 行政書士や弁護士などの専門家に預けている
- 法務局に預けている(※4章で解説しています)
家の中にこうした手がかり(貸金庫の契約書や利用履歴、専門家の名刺など)があれば早いですが、そうした手がかりもない場合は、故人と近しい親族や、親しかった人に聞いてみるのもひとつです。
特に、見落としがちなのが「信頼できる人に預けている」というケースです。
配偶者や子供はもちろん、兄弟や両親という可能性もありますので、相続人であるかどうかに関わらず、遺言書の話を聞いたことがあるかどうか、一度確認してみることをお勧めします。
自宅ではなく実家に保管しているという可能性もゼロではありませんので、勝手な思い込みで範囲を限定せず、思い付くところは必ず調べましょう。
※貸金庫に保管していた場合は開扉が大変…
銀行の貸金庫の契約がある場合、大事な遺言書をそこに入れている可能性も十分にあります。(実際に過去に何度も見てきました)
ですが、契約者が亡くなった後に貸金庫を開けるためには正式な手続きが必要となり、相続関係によっては本当に大変な手続きになる場合もあります。
(※開扉するためには、亡くなった人の死亡から出生までの連続した一連の戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑登録証明書が必要になるところがほとんどです)
もし貸金庫の契約がある場合は、他の相続手続きを進める前に、まずは貸金庫を開ける手続きをしましょう。
1-3.ポイントは見つけた遺言書の「様式」
家の中でも外でも、見つけた遺言書は、以下のいずれかであることがほとんどです。
(※法務局で保管されている場合は必ず自筆証書遺言です)
自筆証書遺言とは、手書きで書かれた遺言書のことです。
一方の公正証書遺言とは、公証役場で公証人と一緒に作成したものになりますので、ほとんどの場合は「●●公証役場」と書かれた封筒に入っていることが多いです。
こうして様式を見分けたうえで、それぞれ次にどのような行動をすればよいか、解説していきます。
2.見つけた遺言書が「自筆証書遺言」だった場合
自筆証書遺言の場合は、遺言書が封筒に入っているかどうかに関わらず、家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。
>>直筆で書かれた遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合の手続き(家庭裁判所にて検認申立て)と流れ
特に、封筒に入ってノリ付けされていた場合は勝手に開封してはいけませんので、注意が必要です。
家庭裁判所での検認手続きの中で遺言書が開封され、検認済証が発行されてはじめて相続手続きを進めることができるようになります。
【発見から手続きまでの流れ】
①自筆証書遺言を発見(※法務局以外の場所で)
↓
②開封せずに家庭裁判所にて検認の手続き
↓
③開封、各種相続手続きへ
見つけた遺言書が果たして検認が必要かどうか、多くの人が悩むポイント別に詳しく解説していきます。
2-1.封筒に入っていない(用紙のみの状態)
検認が必要です。
封筒に入っていないので内容は確認できますが、検認をしないとその遺言書を使って手続きをすることはできません。
2-2.封筒に入っているが、のり付けされていない(開いている)
検認が必要です。
のり付けされていないので中身を取り出して内容を確認することはできますが、検認をしないとその遺言書を使って手続きをすることはできません。
2-3.封筒に入っていて、のり付けされている(閉まっている)
検認が必要です。
この場合は開封する時点で検認が必要であり、検認せずに開封した場合は罰則があります。
なお、封筒を開けてみたら公正証書遺言が入っていたという場合もありますが、まずはじめの「開封」という時点ですでに検認が必要ですので、この場合は自筆でも公正証書でも検認が必要ということになります。
公正証書遺言の場合、「〇〇公証役場」と書かれた封筒に入った状態で受け取っているケースが多いので、その封筒なら中身は公正証書の可能性が高いです。
もしくは少し透かして見た時に、「遺言公正証書」という文字が見えたら中身は公正証書の可能性が高いです。
しかし、どちらの場合も封筒がのり付けされてしまっている場合は中に入っているのが自筆か公正証書の断定が難しい為、慎重に検討が必要です。
(※公証役場の封筒は、公証役場によって封筒のサイズや記載方法が異なります)
2-4.用紙やペンは全く関係ない
保管状態のことではありませんが、用紙の種類、サイズ、色、ペンの種類などは全く関係なく検認が必要です。
高級な和紙であっても広告の裏紙でも違いはありません。ペンの種類に関しても同じです。
公正証書ではなく自筆証書遺言であれば、必ず検認の手続きをしましょう。
検認は、管轄の家庭裁判所に申立てをします。その際、亡くなった人の出生から死亡までの一連の戸籍や、相続人全員の現在戸籍が必要になるため、戸籍の収集だけで数週間かかることも珍しくありません。
その後、裁判所と検認期日の相談になりますので、準備開始から検認が終わるまでに1か月以上、場合によっては2カ月や3ヶ月以上かかってしまうこともあるため、遺言書は早めに探すとよいでしょう。
3.見つけた遺言書が「公正証書遺言」だった場合
公正証書遺言とは、遺言者が公証役場で公証人と一緒に作成する遺言書です。
完成後は遺言書の正本を受け取って保管することになりますが、公証役場の封筒と一緒に受け取ることが多く、封筒に●●公証役場という文字がありますので、そのまま封筒で保管されている場合はすぐに判断することができます。
公正証書遺言の場合は、検認の手続きは不要です。
そのため、見つけ次第すぐに開封し、その遺言書を使って相続手続きを進めることができます。
【発見から手続きまでの流れ】
①公正証書遺言を発見
↓
②開封、各種相続手続きへ
なお、公正証書遺言の場合はその原本が公証役場に保管されているため、もし自宅などで発見することができなかった場合も、全国の公証役場で検索することが可能です。(※ただし平成元年以降に作成されたものが対象)
公正証書遺言を作っていたはず、話を聞いたことがあるなど心当たりがある場合は公証役場に相談してみましょう。
4.法務局に保管されていないか検索しよう
遺言書が家の外に保管されている場合のひとつに、法務局に保管されている可能性があります。
ただし、これは生前に遺言者が「自筆証書遺言書保管制度(法務省のHP)」を利用し、適切な手続きを経ていた場合に限ります。
もし自分が相続人等であれば、亡くなった人の遺言書について、法務局で以下のことを請求することができます。
- 亡くなった人の遺言書が、
法務局に預けられているかどうか(保管の事実の確認) - 亡くなった人の遺言書を、
交付してもらう(遺言書の原本の代わりとなるもの) - 亡くなった人の遺言書の、
内容を確認する(閲覧する)
詳細については、こちらのページでご紹介しています。
(※記事準備中※)
なお、法務局に自筆証書遺言書の保管があった場合は、自筆ではあるものの、検認の手続きが不要です。
遺言書の交付をしてもらえば、そのまま相続手続きを進めることができます。
【発見から手続きまでの流れ】
①法務局で自筆証書遺言を発見
↓
②法務局に交付の手続き
↓
③各種相続手続きへ
5.まとめ
遺言書は、家の中か、家の外か、もしくは法務局にて保管されています。
(公正証書は原本が公証役場にありますが、正本は必ず受け取って保管しているはずです)
生前のうちに遺言者から「遺言書を作ったよ」「法務局に保管しているよ」といった共有があれば探すのもスムーズですが、何も伝えず遺言書を作成していることも当然あります。
遺言書があるかどうかわからないときは、まずはしっかり探し、なかったとしても「なかった」という事実を確認することが大切です。
遺言書を発見した後の検認については、改めて下図の表で要・不要を確認しておきましょう。
見つけた場所 | 遺言書の様式 | 検認の有無 |
家の中 |
自筆証書遺言 | 必要 |
公正証書遺言 | 不要 | |
家の外 | 自筆証書遺言 | 必要 |
公正証書遺言 | 不要 | |
法務局 | 自筆証書遺言 | 不要 |
検認が必要な場合、遺言書を開封するまで(相続手続きに進めるようになるまで)1か月~数か月程度かかることもありますので、家の中はできるだけ早く探すようにしましょう。
遺言書や検認のことでお困りの際は、ぜひ当センターへお問い合わせください。